2024.08.15ブログ
名義預金は相続税がかかるのか?判断基準から対策
名義預金とは
相続税の対象となる財産の種類は多々ありますが、その中で代表的な財産である預貯金について、被相続人本人の名義ではないが、実質的に本人の財産に当たる場合、この預金は「名義預金」と呼ばれます。
名義預金とばれてしまうと
相続税の税務調査では、この「名義預金」の有無が調査の重点項目として挙げられ、調査対象とされることになります。「名義預金」であると認定された場合、相続税の課税対象となり、追加の本税ばかりか、加算税や延滞税といったペナルティが課されることになってしまいます。
名義預金とみなされる場合とは
自身の国税調査官時代には、実際次のようなケースが散見されました。
・専業主婦である妻が、亡くなった夫の収入からやり繰りして貯めていたいわゆる「へそくり」を妻名義で預金していた。
・将来孫のために遣ってやろうと祖父が孫名義で預金をしていた。
上記のような預貯金については、税務署から「名義預金」とみなされ、相続税の対象とされてしまいます。
名義預金の判断基準
この「名義預金」とみなされるかどうかは、次のような要素から総合的に判断されます。例に挙げたような場合には、名義預金とされる要素と判断されます。
- ・預金の原資は何か。
- (例:被相続人の収入から配偶者名義の預金を作成していた。)
- 一般的にはいわゆる「内助の功」があるのだから、夫婦の財産は共有であると考えがちですが、法律的には夫の収入から形成された財産は夫の単独財産と考えます。冷たいようですが、夫婦であっても税法上は他人と考えた方がよいです。(一方相続税法では「配偶者控除」の制度が用意されています。)
- ・預金の名義人が、その預金の存在を知っているか。
- (例:孫名義で預金したが、そのことを孫自身が知らない。)
- ・その預金の通帳や印鑑を名義人と被相続人、どちらが所持管理していたか。
- (例:上記孫名義の通帳や印鑑を被相続人が保管していた。)
- ・その預金の利子などの利益を名義人と被相続人、どちらが受け取っていたか。
- (例:被相続人が預金利息を受け取っていた)
- ・その預金を名義人に対して生前贈与していた事実があるか。
- (例:被相続人が生前名義人に対して贈与していた明確な事実がない。)
名義預金とみなされない対策とは
それでは、名義預金とみなされないためには、どのような対策が必要なのでしょうか。その対策とは?こののようなケースでは、被相続人から名義人へ預貯金が渡された(贈与)ことが客観的に証明できることが有効です。
贈与
- 生前に贈与契約書を交わしておく。自身が無償で相手方に「譲る」ことと、相手方がこれを「受け取る」という事実を明らかにすることができます。
- 当然のことですが、暦年贈与で基礎控除を超える金額の贈与をした場合、贈与を受けた受贈者は、翌年の贈与税の申告手続きを忘れずに行いましょう。このような場合、敢えて基礎控除を超える贈与を行い、申告という形で税務署に証拠を残すということも有効です。
- 名義人本人が預金の存在を認識して、名義人自身が口座を管理すること。
- いくら贈与証書があり、贈与税の申告を行っていても、実際に贈与していた事実がなければ対策にはなりません。
具体的には、次のように客観的に贈与があった証拠を残しましょう。
- 新たに口座を開設する場合には、名義人本人が立ち合い、届出印は贈与者とは異なるものであることはもちろん、できれば名義人が普段使用している印鑑にする。
- 預入資金はできれば振込等で資金の流れを明らかにしておく。
- 名義人が贈与を受け管理している、利息等も名義人が受け取っていることを証明できるよう、通帳・キャッシュカード・印鑑は名義人本人が所持管理する。名義人が普段クレジットカードの引き落としや公共料金の支払いなどで使用している口座に振り込むことで、名義人が名実ともに所持管理運用しておくことなどが有効です。
まとめ
日頃からお世話になっている妻のために、あるいは可愛い孫のためにお金を遺してやりたいと思っても、相続が発生した時に相続人の間で争いの種になったり、思わぬ税金が課されたりといったことを避けるためにも、生前にキッチリ対策を行っておくことが大切です。当相談室では、「相続」が「争族」にならない相続対策についてもご相談いただけますので、お問い合わせください。